もともと労働者が着る服として世界に広まったデニムスタイル。当時は作業着としてのイメージが強く、都会の街並みに溶け込むにはどこか土臭さを感じるようなカジュアルルックだったかもしれません。

しかしブリジット・バルドーやジェーン・バーキンなど、さまざまなジャンルのファッションアイコンたちが日常でジーンズを着こなし、独自のデニムスタイルを確立し始めてからは、そのスタイルをお手本にする人々が増えていき、作業着→ベーシックアイテムとして世界中で愛されるようになりました。

 

正装文化が今でも強いイギリス。そんな国でもデニム生地はファッションアイテムとして根付き、どの世代からも愛用されています。階級社会の国の中で、労働者の服としての認識がどのように崩され、おしゃれとして根付いていったのか。

 

デニムの歴史を遡ると、通常1800年代のアメリカでカウボーイや労働者が着用し始めたところから始まりますが、果たしてイギリスではいつ頃からデニムが浸透したのでしょう。

始まりは1900年代、かの有名な新聞社デイリーエクスプレスが、麦わら帽子に、フロックコート、キャラコシャツ、そしてデニムパンツを着用した黒人を例にあげて、海外文化の紹介のような形でデニムスタイルをイギリスに紹介しています。アメリカでは、労働者を中心に着用されており、工場で働く人達はデニム生地のつなぎ服、大工や、水道業者の中では、特にオーバオールが人気のスタイルでした。

 

1930年代後半に、イギリス軍隊が制服にカーキデニムの生地をユニフォームに取り入れたことにより、生地の頑丈さや重厚感が評判となり始め、1939年にはデイリーエクスプレスのファッションページにて、その当時家事を任されていた女性達へのオススメの服としてデニムパンツが紹介されました。

初めてファッションアイテムとしてデニムが浸透したのは、1940年代。デニムパンツに大きめのセーターがイギリス人女性の中で大流行。また当時のデニムパンツの履き方といえば、腰上で履くのが主流だったようです。

 

終戦後の1950年代に入ると、イギリスの若者はアメリカの文化を好んで取り込むようになり、髪型、洋服、音楽とあらゆる面で影響を受けていたテディボーイズとよばれる若者達も現れました。

また当時はレングスが1サイズでしか売られておらず、余った足丈はロールアップして履いており、現在でも50s風の着こなしをする時はロールアップは定番。

それでもイギリス人にとってデニムは最先端や海外文化を好む一部のファッションアイテムに過ぎず、メインストリームのファッションではありませんでした。しかし1950年代の後半にロンドンファッションの中心地『カーナビーストリート』で、デニムパンツを履いたショーン・コネリーをモデルに起用した広告が使われたことにより、たちまち全英の若者に広まりました。

また1957年にはイギリス初のデニムブランド『Lee Cooper』が登場したことにで、よりファッションとして浸透。当時はテーパードパンツを中心に売り出されていたようです。

 

そして1960年代にはいると、大手アメリカンデニムブランドの『リーバイス』や『ラングラー』が上陸。1960年代の中頃には全世代に受け入れられるファッションアイテムになりました。またモッズと呼ばれる若者達がスタイルに取り入れたことで、モッズ系バンドがジーンズを履き始めたり、ザ・ローリングストーンズがLee Cooperとスポンサーシップを結ぶなど、デニムスタイルがメインストリームへ発信されるキッカケの一つとなったことは言うまでもありません。

その後デニムスタイルは時代と共に変化をくりかえし、70年代にはダメージジーンズ、80年代のケミカルウォッシュ、90年代になると古着として愛され、00年代はローライズが流行るなど、現在では多くのブランドで当たり前のように取り扱われている定番ファッションアイテムの一つです。

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